労務管理ニュース

労務管理に関する気になったニュースを社労士の視点で解説を加えてお伝えします。

『ホテル阪神料理人時間外100時間超 総支配人書類送検』毎日新聞記事(2014/3/13)より

「ホテル阪神(大阪市福島区)の料理人に月100時間を超える時間外労働をさせていたとして、西野田労働基準監督署(大阪市)は12日、ホテルの男性総支配人(56)と運営会社の阪急阪神ホテルズを、労働基準法違反の疑いで書類送検したと発表した。料理人の男性が倒れて死亡し、発覚した。総支配人は「人手が不足していた」と話し、容疑を認めているという。  送検容疑は昨年7月、労使協定で定めた上限の月60時間を超える時間外労働を、男性にさせたとしている。  労基署によると、男性(当時54歳)は昨年8月上旬に倒れ、脳幹出血で死亡。前月の7月に月101時間の時間外労働をしていた。男性を含め4人が90時間以上の時間外労働をしていたという。  阪急阪神ホテルズの広報担当者は「捜査には全面的に協力する」としている。」

≪解説≫
労働基準法では、32条で労働時間の限度が以下のように定められています。
1.使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2.使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

このケースで問題になるのが、1.「時間外労働協定(36協定)が締結されていたか」2.「36協定で締結した労働時間が守られていたか」の2点になります。
1点目の36協定は締結されているので、この点については問題ありません。 2点目についてはどうでしょうか? 36協定で締結できる労働時間には下記のように上限が設定されています。

1週間 15時間
1か月 45時間(特別条項付協定の場合は60時間)
1年 360時間

この事件のポイント
POINT1 36協定は締結されているか?
→締結している場合その期限は切れていないか?
POINT2 36協定で定めた労働時間を超過して勤務している状況はないか。
→使用者には労働者の労働時間を適切に管理する義務があり、知らなかったは通りません。
POINT3 超過時間に対する割増賃金は適切に支払われていたか?
→支払いがなかった場合、最長2年分の支払い命令が出されることがあります。
POINT4 労災の過労死認定基準には適合するか?
→過労死の場合、労災と認定されるかも大きな問題です。
①対象疾病か?(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止、解離性大動脈瘤)
②業務上の過重負荷が認められるか?(発症前24時間、1週間、6か月(1か月)で判断)
→発症前1か月で時間外労働が100時間超(他の期間を平均して80時間/月以上)
特別条項付の労使協定を締結して月60時間の上限を定めたにも関わらず、それを超過して勤務させたことが労働基準法違反を問われています。このケースでは労災の過労死の認定基準にも当てはまりますので、その調査で労基法違反が発覚したものと思われます。
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